東京高等裁判所 昭和58年(う)1875号 判決
被告人 井上貫一
〔抄 録〕
所論は、量刑不当を主張するものであるが、論旨に対する判断に先立ち職権をもって調査するに、原判決は、法令の適用において、併合罪の処理をするにあたり原判示第五の無免許運転の罪の刑が最も重いとして同罪の懲役刑に併合罪の加重をしているところ、被告人の原判示第一、第三の各業務上過失傷害の所為は刑法二一一条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同判示第二、第四の各救護義務違反・報告義務違反の所為は道路交通法七二条一項前段・後段、一一七条、一一九条一項一〇号に、同判示第五の無免許運転の所為は同法六四条、一一八条一項一号に各該当し、原判決は同判示第一の業務上過失傷害罪につき禁錮刑、その余の罪につき懲役刑を選択しているものであるから、同判示累犯前科との関係で同判示第二ないし第五の罪につき再犯の加重をすると、最も刑の重い罪は同判示第三の業務上過失傷害罪であることが明白であり、従ってこの刑に刑法四七条本文、一〇条により法定の併合罪加重をすべきものであって、原判決が前記のように原判示第五の無免許運転の罪の刑をもって最も重いとし、これに併合罪加重をしたのは法令の適用を誤ったものというほかない。そして、原判決のように誤って原判示第五の無免許運転の罪の刑に併合罪加重をすると処断刑は懲役一月以上一年六月以下となり、本件の正当な処断刑懲役一月以上一五年以下とは格段の差異があるところ、原判決の量刑は右正当な処断刑の範囲内にあるとはいえ後記判示のとおり軽きに失するものと考えられるのであって、したがって、原判決の前記法令適用の誤りは判決に明らかに影響を及ぼすものと認めざるを得ず、この点においてすでに原判決は破棄を免れない。
(佐々木 竹田 中西)
(編注・刑訴法四〇二条により、原判決と同じ刑で自判)